インドカレー

蒸し暑い日、お昼はカレーを食べたくなりました。

インド人の料理人が作ってくれるスパイシーなカレーね。

最近、インドカレーの店が増えてくれたので

気軽に食べに行けるようになりました。


ひとりで入店すると、

ヒトリですか?こっちどうぞー。

インド人のお姉さんが席まで案内してくれました。

席について、水が届いて、

決まったらこれで呼んでください。と、

呼び鈴を渡されました。

なんにしようかな。ランチおすすめのコースが4つあるね。

800円、950円、1100円、1350円のコース。

カレーの種類と、サイドメニューが違うらしい。

1100円のコースはカレーが3種類、タンドリーチキン、サラダ、チャイがついてきて、ナンorごはんはお替り自由なのね。

これにしよう。

呼び鈴を鳴らしてみる。

あれ、誰もこないぞ。

遠慮気味に鳴らしたもんな、もう一回振ってみようか。

お姉さん、すぐきた。

低い声で、さっき、きこえました。

あ、あそう。ごめんごめん。怒った?

1100円コースを。

Cコースひとつ。

あ、Cコースっていうのか。書いてあったかな。まあいっか。

カレーの辛さどうしますか?

え?

カレーの辛さを選べます。1~8。そこに書いてある。

あ、なるほど、見てなかった。

1が子ども向け、3が普通、5が辛い、7は激辛、8は自己責任。

自己責任て。

4がうま辛と予想して、4でお願いします。

4ね。おまちください。

はいはい。


料理が届くまで周りのお客さんたちを眺めて待とうか。

食べ終わってチャイを飲みながら読書してる人。

お互いのカレー食べ比べをしてるカップル。

サイドメニューのインド風春巻きをつつきながらビールが進むおっさん3人組。

ちゃばちゃばやってるお姉さんとおばさんの間くらいの2人組。

と、

ひとりで入ってきて、隣の席に案内された若い女性客。

壁を背にしてソファにボスッと座る。

ボスッと聞こえるほどの質量。彼女のビジュアルイメージは読者におまかせします。

座るなり、カバンからスマホを出してスワイプスワイプ。早い。

手首のスナップ、かなりのものだね。

無音でスワイプしてるだけなのに、

まわりの空気を押しのけてそこにいる感がすごい。

この、圧ね。


お、隣を気にしてたら、サラダとスープとチャイが届いた。

どうぞ。カレーもう少しね。

はい、わかりました。ゆっくりつついて待ってます。

お姉さんがバックヤードに戻ろうとしたところで、

お隣が呼び鈴をしこたま鳴らして待ったをかける。

あの、注文いいです?今日のおすすめカレーランチはどれですか。あ、これですか。何が入ってるんですか。え、サトイモとほうれん草のカレーですか。お肉は何が使ってあるんですか?チキン、そうなんだ。じゃあ、これにします。辛さ?5はどれくらい辛いんですか?辛いのけっこう平気なんですけど、よく出るのはどれくらい?あそうなんだ。じゃあ6でお願いします。ナンはチーズトッピングで、ライスの小も一緒にお願いします。

おお、高気圧。。

ワタシはキミをそう呼ぶことにします。



お、自分の食事に戻ろう。

チャイを飲んでみる。

ショウガの効いたミルクティ。でもそれだけの味じゃない。

得体のしれない雑味が舌の上に残るね。でも嫌いじゃないな。

蒸し暑い日にはこういうのがいいね。

サラダに手をつけて、スープをすすって

ドレッシングのスパイシーな香り、これはいいね。

食欲が湧いてくる。と待っていたところに、

お待たせしました~。

三種のカレーといろいろのった大きなトレイが届きました。

さあ、食べましょうか。いただきま、


お、高気圧のスワイプスプラッシュが視界に飛び込んでくる。

キミもお腹が空いてるんだろうな。イライラを伝えてくれてるのか。

ごめんよ、Tちゃんは先に食べ始めます。

タンドリーチキンをつまんだが、これがうまい。

おっさんたちがつついてるインド風春巻きの中身はたぶんこれだな。

ナンがでかい。ちぎってもちぎっても減らない。

カレーは辛さ4で正解だったね。うま辛どんぴしゃ。

じっくり味わおう。楽しいね。



あ、やっと高気圧の席にも料理が届いたぞ。

やっと、食べられるね。前菜からだけど、キミもゆっくりお上がりなさいな。

このカレー屋は当たりだよ。


…。

高気圧、食べ始めない。どうした。お待ちかねの料理だよ。

あれだけ早口で注文して期待してたんじゃないのか?

スワイプをやめない。どうした。料理が見えないのか。腹でも痛いのか。

いや、これは、なにか大事な連絡でも入ったんだろう。

高気圧、熱いうちに食べるのも値段のうちだよ。








パタン。ドコッ。

スマホケースを閉じて、テーブルに置いた。

ガサガサ、パチッ。ワシャワシャワシャ。

カバンから割りばしを取り出して、割ったかと思ったら、

サラダの皿を手に取って、野菜がどんどん口に放り込まれていく。

コトン。ズズー。ズズー。コトン。

皿を置いたと思ったら、スープを飲み干して、

カチャカチャ、ガブッ、パクパク、ムシャムシャリ。

スプーンとフォークを両手で使って、カレーとチキンとライスがすごい勢いで口に入っていく。

もちろん、ナンをちぎっておくのも忘れていない。

スプーンを置いたら、もちもちのチーズトッピングのナンを片手に持ちかえて

ムシャムシャ、パクパク、バクッバク。

ワシャ、ウワシャ、モグモグ。

食べてる間にスワイプも怠らず、

そして、モグモグ、ガサガサ、パクパクっと、ガブ。ガブリ。

ワシャワシャ。

高気圧。

・・・・。




Tちゃんのトレイが5割くらい食べ進んだころには、

隣の席は空いていて、お腹いっぱいになった高気圧は、

会計を済ませ、お姉さんに見送られて店の外に出ていきました。


Tちゃんはゆっくり食べましたよ。

蒸し暑い今日はカレーを味わいに行ったんですからね。




気まぐれ天気に翻弄されて始まった連休ですが、

うっとうしい秋雨前線を蹴散らしてくれるような

気持ちのいい秋の風、待ち遠しいですね。