水が欲しい
仕事を終えて帰ろうすると、もの凄い雨。
こりゃたまらん。
長い帰り道、この降り方はないだろ。
ということで雨がおさまるのを待つため、
仕事場近くの温泉風呂で時間を潰すことにした。
風呂につかると元気になる。
歳を重ねるごとに、この感覚が強くなっている。
そして、どんどん風呂を好きになっている。
間違いない。
温い、やさしい、やわらかい感覚が沁みる。
いや、解放感のほうが上か。
世の風呂を愛するおっさんたち、だいたい同じことを感じているだろうな。
風呂で会ったら全員ともだちみたいなもんだ。
いい気分になった帰り道、まっすぐ帰宅するのももったいないので、
ちょっと寄り道をして飲むことにした。
いい酒を味わう。
まいった。
知らなかった。
なんでも試してみるもんだ。
風呂、酒、おっさんが好きなものを両方やって、
いい気持ちになれた。
雨上がりで涼しかったので徒歩で帰路についた。
が、水、水、喉が渇いて仕方ない。
うまい酒を飲んだら、それと同じくらい水がいる。
やっと自販機にたどり着いて、
遅い時間だから誰もいないだろうと思っていたが、
先客がいた。
そこ、気持ちいいのかい?
先週はカッパに出会い、
今週はカエルに出会う。
梅雨が近いのだな。
鼻先を覗き込んだら
目が合う。
忙しいからジャマすんな。か。
わかった。了解した。
こんな遅い時間に、
明るい場所に引き寄せられて、
お互い水を必要としている。
姿こそカエルのかたちをしているが、
その中身は、ワタシと同じく、
変わったおっさんであろうことは間違いない。
一方的な親近感。
カエルのおっさん。
またな、次は一緒に飲もう。