よしよし。
猫が食べることをやめて8日。
水は飲む。
食べ物を鼻先に持っていくと、
はっきりわかるようにそっぽを向く。
「いらない」といっている。
痛がったり、苦しがることはない。
トイレに歩く以外は、いつもの場所で静かにしている。
今週は仕事が手につかない。
猫は目に見えて痩せていく。
ふらふらとトイレに歩くのが心配で
あとをついて歩く。
心配で抱きかかえると、これにはイヤイヤをする。
ごめん。そうだった。いつもそう。
何度か立ち止まる。休憩もいる。
トイレに到着。おしっこをする。
時が止まりそうなほど優雅に動く。
用を足したあとの砂掻けは省略らしい。
省エネ。力を温存するつもりだ。
なのに、バランスを崩してよろける。
どさっと砂の上に倒れる。
起き上がろうとしたが、やめてしまった。
ぼんやり、こちらを見ている。
よしよし。助けるよ。
抱きかかえて起こしてやる。
毛皮の下のあばら骨の形が、指先にはっきり伝わる。
床におろしてやると、
とぼとぼ歩き始める。
ゆっくりといつもの場所に戻る。
あとをついて歩く。
もう20年になる。
これまでの人生の半分の時を一緒に過ごしてきた。
この子の命は消えようとしている。
それに私は激しく揺さぶられている。
もう、ぐらぐら。
トイレで抱き起こすのが、たまらない。
でも、助けるよ。
よしよし。