草引き
しごと場でお会いしたバリバリの後期高齢者の方から
おもしろい話を聞きました。
おばあちゃんはとても味のあることを言うんです。
なんでそんな話になったのか覚えないんですが、
「あなたのストレス解消法は何ですか?」という話題になりました。
おばあちゃんは「うちぁね、畑へ草引きに行くほ。」と言われます。
T:「草引き?」
ば:「そう、草引きいね。知らんかね?草引き。」
T:「いやいや、わかるよ。」
ば:「昔はね、嫁いだら主人の家のしきたりに従うて生活するのが当たり前じゃったそ。今みたいにおなごは自由になりゃせんの。人様のやり方に合わせて生活しよりゃね、こまいことで、主人やら、お姑さんとやりおうてから、よ~気もちがしわくちゃになりよったいね。」
T:「そうなん。」
ば:「あんたにゃ、わかるまあけどね、郷に入ては郷に従えって言うたんよ。今から思えばね、昔のおなごは主人の【家】と結婚したの。」
T:「そうなん。へで、それと草引きがどういう関係なん?」
ば:「それーね、それ話しよったんじゃ。」
T:「気持ちがしわくちゃになったら畑へ行きよったん?」
ば:「なんか言われても、すぐ出るんじゃないんよ。ちゃっと家のことせてから外に出んにゃ、またお姑さんに言われるけーね。まー明治の人じゃったからね、厳しい人じゃったいね。炊事場のこと済ませてからね、『おかあさん、裏の畑におります。』っていうて、出よったそ。」
T:「なんか話しが、めんどくさいねえ。で、次どうなったん。」
ば:「あんた、笑ろうてから、うちゃ、まじめに話しよるんよ。」
T:「ごめんなさい。んで、次は?」
ば:「裏の畑へ出てね、畝の縁へ座り込んでからじっこじっこ草引くのいね。」
T:「くそばばあー!とか思いながら?」
ば:「バカじゃね、あんた。心でそねーなこと思いよったら、人にはそれが見えるんよ。うち方のお姑さんは、とくにそんとがわかりよったんじゃけ。」
T:「こころの中で思うだけでも、見えるん?」
ば:「あんた見えんかね?いっぺんこころで思うたらね、はーそりゃ出るいね。」
T:「態度っていうこと?」
ば:「それだけじゃのうて全部いね。歩きよったら、歩き方。草引きよったら、草の引き方。息しよったら息の仕方まで。わからんかね。」
T:「わかるような、わからんような。。」
ば:「あんた、そねーなしごとしよるんじゃったら、目だけで見るんじゃないよ。」
T:「そうじゃね、そりゃそうじゃ。」
ば:「へでからね、草を引くじゃろうがね。草引きの話じゃろうがね。」
T:「そうじゃった。(完全に、ばあちゃんのペースじゃ...)」
ば:「草もぐ手は止めんとね、じいっと考えるほ。あれが悪いんか、これが悪いんか~。あいつが悪い、こいつが悪い。あ~でもないこ~でもないって、煮えた気持ちを思い出すほ。」
T:「なんか暗い草引きじゃね。。」
ば:「そねーなものいね、身近な人との間ほど、深おうて、暗いもんはないよ。」
T:「哲学じゃね。」
ば:「ばか言うちゃいけん。そねーな高尚なもんじゃない。」
T:「で、煮えた気持ちはどうなったん?」
ば:「それーね、草引きながら、土さわりながらしよるとね、だんだん気持ちがかわるんよ。不思議なもんでね~。あんた、やったことないかね?」
T:「木は切るけど。」
ば:「あんたん家は、山かね?」
T:「違う。人の山じゃけど。」
ば:「あんた、そんとして、叱られんのかね?」
T:「ええんよ、あれもしごとじゃけ。ボクの話はええの。つづき教えてーや。」
ば:「あんた、ようわからん子じゃね。」
T:「子か。。でつづきは?」
ば:「土さわりよるじゃろ。そしたら土からね、あたしの気持ちじゃない気持ちが入ってくるんよ。」
T:「それ、だいじょぶなん?」
ば:「例えじゃろうがね、よう聞いちょきさん。」
T:「はい。」
ば:「土がね、あんたが正しいんかね?って言うてくるほ。聞こえるんよ。」
T:「聞こえるん?」
ば:「そうよ。土からね、あんたは自分が正しいと思うちょるから悪者探しするんじゃろうがね?って。」
T:「・・・・。」
ば:「草引いて、土さわって、手は止めんとね。うちは畑から教わりよったの。」
T:「悪者探しを?」
ば:「バカじゃね、あんた。賢い生き方を教わりよったほ。」
T:「・・・・。」
見た目↓こんな感じのおばあちゃんなんだけど、
なんか、すごかったです。。