くだをまくサラリーマン

金曜の夜

二つめのヤマをおりる。


大将の顔をみながら

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ほっとするあんかけしんじょを

突きながら飲んでいると


空席を挟んだひとつ隣の席で

サラリーマンがぼやいているのが聞こえた。




「オレから我慢をとったら何が残ると思ってるんだろうね。

オレが丁寧に話してやってるから、あの場がまとまってるんだろ。

オレが我慢しなかったら、あいつら、どうなると思ってるんだ。

あいつらこそ、オレに向かって偉そうに言えるなにかをやってるのかね。

お前こそ、ちゃんとやれよって言ってやりたいのを飲みこんで仕事してるんだよ!

オレはオレの領分をわきまえてるんだよ。わかるか、それが大人だろ。

そしたら、どうだ。

あいつら、今度はオレに向かって思ったことはちゃんと吐き出せと言いだした。

どういうつもりなんだろうね。

じゃあ、明日からオレが、

おい、お前ら、そんなこともわからないのか。もっと勉強しろ。それでもわからないなら教えてやるよ。って

やっていいのかね。

明日から、そうしてやろうか。

そしたら、あいつらどういう顔をするんだろうね。バカなやつらだよ。

オレのことを何にも知らないくせに、えらそうなこと言ってんじゃないって言ってやろうか。」

概ね、こんな内容だったか。


サラリーマンは酔った勢いで

くるくるぐるぐる、延々くだを巻いていた。


これを聞かされてるおそらく後輩さん、

うんざりとした笑顔が印象的だった。



サラリーマンのくだ巻きに

直感したことは

この人は絶対に「やらない」ということだ。

おそらく自分で自分に決めてしまった枠を破る力はない。


自分で決めた枠に絡めとられて

そんなオレは健気だろうと後輩に語る。


くだを巻いてるだけじゃ、殻は破れない。

言葉って虚しいもの。

自分で自分の不全感が拭えないのは、苦しいことなんだな。





こんな話を肴にして

飲むのもわるくないものだな思う。

でも、やっぱり悪酔いはしちゃだめだな。