とうえい
静かな森で暮らす野ねずみがいいました。
「ボクみたいに小さくて、力の弱いねずみが、あのこに好かれるわけがないよ。」
野ねずみには、気になる雌ねずみがいるようです。
「おいおい、野ねずみくん。キミはどうして好かれるわけがないなんて思うんだい?」
そう聞くのは、森へ遊びにきた街のねずみです。
「そりゃ、考えてもみろよ。ボクみたいに、森でほそぼそと暮らすちっぽけな野ねずみが、街の大きな家で暮らしてるあのこに、釣り合うと思うかい?」
すると、街のねずみは、
「野ねずみくん、キミは彼女の暮らしをみたことがあるのかい?」
と聞きました。
「ボクが直接見たことはないけどね、風の便りで聞いたことがあるのさ。」
「どんな風に聞いたんだい?」
「街の大きな家で暮らしていると、いつも食べ物があって、あたたかい寝床もあるんだってさ。
彼女は生きることに困ってなんかいないのさ。森で毎日、食べ物を探しまわってるボクなんて、みすぼらしくて相手にもしてもらえないさ。」
街で暮らす雌ねずみはいいました。
「ワタシみたいに不幸なねずみはいない。人に守られて何の苦労もしらないまま生きている。
生きることにはこれっぽちも困っていないのに、生きている気がしない。」
雌ねずみは窓から見える遠くの森をながめながら、
「森で暮らしてる野ねずみさん、彼のように暮らしてみたいわ。」
というのです。
野ねずみは、街のねずみに言いました。
「街のねずみくん、彼女を幸せにできるのは、君のようにたくましくて、街のことをよく知っている賢いねずみしかいない。君こそ彼女にふさわしいねずみだよ。」
街のねずみは言います。
「野ねずみくん、きみはほんとうにそれでいいのかい?」
「ああ、こころから君を応援したい。そして君と彼女の幸せを祈りたいと思うよ。」
街のねずみはいいました。
「そうすると、野ねずみくん。きみは僕を恋敵にしておいて応援するというのかい?」
「そうなるのかな・・。」
「野ねずみくん、僕にはずいぶん、都合のいい話に聞こえてしかたないよ。」
「そうかもしれない・・・。」
「僕はきみのあきらめを請け負う役なんて、まっぴらごめんだよ。」
街のねずみは、きっぱりとそう言って、
街へ帰っていきました。
かわいそうなねずみさん。。
どうしたらいいのだろう。。
もしも
見つけたら
どうしようかしら。。。