お客さま

うちの庭で見かけるセミの抜け殻です。

毎年、時期になると地中から這い出し、

庭木によじ登って羽化します。

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彼らの羽化を待って見ようと思うほど関心はないのだけど、

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変身の痕跡は確かめてあげるようにしています。

この抜け殻の主たちは、とっくに寿命を終えてしまいました。

庭木の水やりのたびに見かけるのは、次の命のために解体される姿でした。




今日は、抜け殻の主たちとは違うお客さんがやってきて


網戸でにぎやかにやっていました。

それにしても不思議に思うことがあります。

毎年生まれてくる新しいセミたちは、いったい誰に鳴き方を教わるのだろう。

その年生まれた先輩に習うとしても、

その先輩はいったい誰に教わるのか。。




セミの夏は忙しい。

お?今年か?だったっけ?え、ほんとか?

しゃあない、出るか。

うんしょ、こらしょ、地面まだ?

遠くない?こんなに潜った覚えないけど。。

て、あれ。あ、その木にしようか。

ああ、背中かゆいっ。あ、もう割れ始めたか。やばいよ。

時間切れになりそ。よじ登る途中でパカッとか、シャレにならん。早よ登れ登れ。

まずい、もう皮がぴきぴきいいだしよる。

もうちょっと、枝先までもうちょ、ああ、もう無理。ここでええか。

ピキピキピキピキ、ぬしゃっ、ぬしゃ。

おおおお、ギリやった。

もうちょいで羽根伸びんままになるとこやった。

なんで一度始まったら、自分でも止められないのかね。

さーて、乾いたら、どこ行こうか。

あ、おい、隣の。そう、君はさあ、どこ行くの?

え、この木の上?なになに、僕は慌てて飛ばないって?

んん、まあ、それは無難な選択やね。

だけど、せっかく羽根もって生まれたんだから、

俺は飛ぶよ。

明るいほうに行けば、何かあるでしょ。

きた。背中むずむずしてきた。たぶんこれだ。

んじゃ、背中に気持ちを集中して、と、

んで、肩のあたりぐるぐるする感じか?

こうか?これでよかったか?

お、ぶーん。いいだした。

お、浮いた浮いた。これか。

ああーーーー。




誰に教わるでもないけど、

這い出て、羽化して、飛びまわる。

誰に教わらなくても、短い間に一生分をやりきって、子孫残して、また還っていく。




網戸で鳴くお客さんを見て、

セミの不思議を堪能するとともに、

わたしたちヒトは何から何までだいたいのことを

誰かに教えてもらって、やっとこさ「人」になれるのだなと思いました。