ひとまわり

ひとまわり違う若い人と話す機会があった。

若々しい容姿、身だしなみも整って清潔感があり、礼儀正しい。

恵まれたものを備えているなと感じた。

しかし、酒を交わしながら彼の素性を知るうちに、

見た目からは感じられなかったものが見えてきた。

おおよそ、ここまでの人生を平凡に歩んできたワタシなどとは

比べものにならないほど厳しい環境で育っていることがわかった。


暴力、愛情、理不尽、依存、生命の危機。

彼が自分の人生を語るために使ったキーワードすべてを

幼少の頃から日常的に経験してきたという人は少ないだろう。

キーワードを誇らしげに使うわけでもなく、

ただ自分の歩んできた人生を説明するのに必要だから使うといったふうだった。


ギリギリの環境をなんとか生き抜いてきた経験は

今の彼にとって、人への優しさや思いやりとなってあらわれている。

落ち着いていて、酔っても礼儀正しい。

彼に「きみは立派だ」と伝えると、

彼は「見た目に惑わされないでください。僕も不合理なもの抱えてますよ」と話す。

自分も人と変わらないのだと強調して言う。

「本当に立派な人は、こんなこと自分で言いませんから。」だそうだ。

よく見えているなあ。。

人のせいにしない。自分にウソをつかない。慎みを忘れない。

ひとまわり違う若者にたくさんのことを学んだ。


彼は黙って自分の仕事をする。

常に人への配慮を欠かさないが、人の目を気にするような働き方はしない。


君のモットーは?と尋ねると、

「人に恥をかかせないことです。」と、ためらいなく答えた。

彼の人への配慮とは、そういうことなのだ。

学ぶことの多い酒だった。



もうひとつ、最後に

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君に足りないものは?と尋ねると、

少し考えて「人に笑ってもらえるユーモアですかね」と答えた。

ああ、それならいくつかワタシも君の役に立てると思うんだがね。。