ちまきの味
4月17日(水)
九州山歩きの帰り、温泉につかっていたときのこと。
ワタシのほかに、若い男性と初老の男性が湯船にいた。
彼らの話す内容や言葉遣いから、義理の親子関係らしいことを察することができた。
どうやら家族旅行中らしく、お義母さんとお嫁さん、お子さんは隣の風呂に入っている模様。
同居という感じではなく別々に住んでいて、時々行き来のある程度といった様子。
息子さんの仕事が大変だとか、子育てが大変だとか、どう転んでも大丈夫な話題なのに、
どこかよそよそしくてぎこちない。。同じ湯船につかり黙って聞いているこちらがそわそわしてしまう。。
素っ裸のはずなのに、はだかの付き合いにまで達しないこの感じ。。
ワタシには経験のない話。。
息子さんはワタシより少し若いくらい。お義父さんは70歳手前という頃。
ふたりの会話、最初は気にならなかったんだけど、
おそらくお義父さんの癖なんだろう。。
息子さんが少し早口で話すたび、
お義父さんが小さい声で「はい?」っと聞きなおす。。それが連発する。。。
その都度、息子さんは同じことをゆっくりと繰り返す。
最初は気にかけなかったけど、会話の進まないのが段々気になって、傍聴しているワタシがイライラする。
息子:「この間、こどもと出かけたときにですね、」
義父:「はい?」
息子:「このあいだ、こどもと、出かけたときにですね、、」
義父:「あ~」
息子さんはとても丁寧で優しい人柄なんだと思う。
イライラした素振りもなく、ゆっくり会話をすすめる。
たぶん、ワタシには無理。。
旅行先の露天風呂でゆっくり湯船を楽しみたいところだろうけど、
お義父さんとの大事なコミュニケーションに粗相がないよう注意深く接している姿に
なにか尊いものを感じてしまった。。。
ふたりは幾らか先に上がっていかれたが、
ワタシが脱衣所に戻ると、まだそこにいる。。
お義父さんがロッカーの鍵をどこかに置き忘れたらしい。
裸のお義父さんがウロウロしながら鍵を探して、息子さんも裸でそれに付き合っている。
息子さん、自分のロッカーの鍵はあるだろうに。。自分だけ着衣は、ないんだな。。こういうときって。。
そのうち、お義父さんが行動の記憶を掘り起こして息子さんがそこを探してみるシステムへ移行。
結局トイレに置き忘れていたのを息子さんが発見して落着。
ワタシは知らん顔して身支度を整えていたが、アタマの中には小さな拍手が起こっていた。
拍手はもちろん息子さんに向けて。。
脱衣所を出るタイミングがほぼ同じになり、
外に出てみると隣の風呂に入っていたご家族がだいぶ待ちくたびれた様子。
お子さんは元気元気。温泉の蒸気で蒸したちまきを食べたいとせがんでいる。。
家族と合流した男性ふたり、先程までの活発な会話は嘘のように
お互いに黙って家族の喧騒に埋まってしまった。
どちらの顔にも安堵が見える。。湯気の出るちまきをほおばり始めた。
ちまきはとても美味いらしい。
ワタシもひとつ買って食べてみた。
つづく